在日米軍「印象操作」の背景を探る

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トランプ政権の軍事戦略のひずみ

 

2017127日の『西日本新聞』は、LCAC夜間訓練の理由について、「夜間訓練の縮小が10月以降は認められなくなったため」という米海軍の声を報じた。その背景には、核ミサイル実験を繰り返す北朝鮮に対して、空母の近海派遣を行うなど軍事的圧力を強める、米国のトランプ政権の軍事戦略がある。

オバマ前政権(任期200917年)が国防予算を削減する方針をとったため、20107月には予備役と文民をのぞき約142万人あった米軍兵力数は、2016年会計年度末までに130万人強まで削減された。これに対して、トランプ政権は201712月末現在、2018年度会計予算における国防予算の上限引き上げと大幅増大を議会に要求している。だが、オバマ政権が予算管理法で定めた国防予算の強制削減措置が続いているため、2017年末時点の米軍兵力数は、前年から4400人減少した。

こうした状況で、トランプ政権になってから、中東での「テロとの戦い」に加えて北朝鮮への対応も課された海軍は、人手不足の中で週100時間の任務をこなさねばならず、2017年を通して死傷者が出る複数の事故を起こした。LCAC夜間訓練は、海軍の事故防止策の一環だと考えられる。

海兵隊もまた、20171月からイラクでのISIS掃討作戦に派遣されることになった。同年10月にはイラク・シリアのISIS占領地域の「首都」が陥落したが、前後してトランプ大統領が8月、アフガニスタンへの米軍の駐留継続を決定したのを受けて、今度は3000人の増派部隊がアフガニスタンに派遣される。

予算や兵力が確保される前に軍事作戦を拡大させているトランプ政権の軍事戦略のひずみが、日本国内で合意違反の米軍訓練や米軍機事故の頻発という形で現れているのだ。

 

日米は「完全に一致」の陥穽

 

安倍晋三首相は2017年を通じて、「対話ではなく圧力が必要」という日米の対北朝鮮方針が「完全に一致」していると強調してきたが、米国の軍事力に依存した状態での同国への同調姿勢は、逆に日本の米国に対する立場を弱めている。

というのも、前述の国務省報告書によれば、受入国が脅威に直面し米軍の存在を必要としているとき、米側は地位協定に関する交渉で優位に立てるので、その優位性を最大限利用する方針をとっているからだ。

沖縄でCH53E炎上事故が起きた際、日本政府と沖縄県は、原因究明まで同型機の飛行停止を求めたが、米軍側はこれを無視して事故の7日後に飛行を再開した。その約二カ月後、CH53Eは再び沖縄で普天間第二小校庭への窓落下事故を起こしたが、6日後には今度は日本政府の容認のもとで同型機の飛行が再開された。

日本政府が、米国と北朝鮮の間を仲介するなどの選択肢を模索せず、米国の軍事力に依存した対北朝鮮方針をとる限り、在日米軍の運用に対する発言力はゼロに等しいといえよう。

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