なぜ米軍機は民間地に「着陸」するのか
2018年の沖縄は、米軍機によるトラブルで幕を開けた。
1月6日、うるま市伊計島の海岸の、住宅地から100メートルほど離れた場所に、米海兵隊普天間飛行場に所属するUH1ヘリコプターが「緊急着陸」した。8日にも、沖縄県読谷村儀間にある廃棄物処分場に、同飛行場所属のAH1攻撃ヘリコプターが「緊急着陸」。処分場から約300メートル先には、1000人以上が宿泊できるホテル日航アリビラや住宅がある。そして23日には、渡名喜村の医療用ヘリポートにAH1が「予防着陸」した。
沖縄では、普天間飛行場の輸送機MV22(通称オスプレイ)が2016年12月、名護市辺野古近隣の浅瀬で大破したのを皮切りに、米軍機による事故やトラブルが繰り返し起きている。2016年に県内で発生した米軍機によるトラブルは11件だったが、2017年には25件まで増加した。そして、2018年に入ってその頻度が加速している。
実は、日米地位協定のどこにも、基地外で米軍が自由に離発着できる、とは書かれていない。では、なぜ米軍は、このような行為が許されているのだろうか。
日米地位協定第3条(基地管理権)
日米地位協定第3条の冒頭には、次のように書かれている。
1 合衆国は、施設及び区域内において、それらの設定、運営、警護及び管理のため必要なすべての措置を執ることができる。日本国政府は、施設及び区域の支持、警護及び管理のための合衆国軍隊の施設及び区域への出入の便を図るため、合衆国軍隊の要請があつたときは、合同委員会を通ずる両政府間の協議の上で、それらの施設及び区域に隣接し又はそれらの近傍の土地、領水及び空間において、関係法令の範囲内で必要な措置を執るものとする。合衆国も、また、合同委員会を通ずる両政府間の協議の上で前記の目的のため必要な措置を執ることができる。
米軍は基地内については管理権を持つが、基地外については必ず日本政府と協議した上で法令にしたがって行動する、と定められているのだ。
だが、実際にはそうなっていない。その理由は、第3条に関する「日米地位協定合意議事録」に、次のような規定が存在するからである。
第3条 1の規定に基づいて合衆国が執ることのできる措置は、この協定の目的を遂行するのに必要な限度において、特に、次のことを含む。〔中略〕
4 施設及び区域の能率的な運営及び安全のため軍事上必要とされる限度で、その施設及び区域を含む又はその近傍の水上、空間又は地上において船舶及び舟艇、航空機並びにその他の車両の投錨、係留、着陸、離陸及び操作を管理すること
米軍が必要とすれば、基地周辺でも米軍機の離着陸や操作を行える、とされているのだ。 なぜ、第3条の条文と相反する内容の合意議事録が存在するのか。それを理解するには、1960年に実現した日米安保改定までさかのぼらなければいけない。