翻訳本で沖縄を「自己紹介」
結局、4日間で台湾の出版社4社と商談を行い、30冊のうち16冊について翻訳の検討をしてもらうことになった。ボーダーインクは、萩尾俊章著「泡盛の文化誌」と新城和博著「ぼくの<那覇まち>放浪記」が台湾側の目に止まり、池宮紀子社長は「その内容について私が熱く語ると、熱心に耳を傾けて、大いに関心を持ってくれたようだった。本を通じて気持ちがつながったようでうれしかった」(2018年2月23日付「琉球新報」への寄稿)と振り返った。
沖縄関係の本が海外で翻訳されたことはこれまでになかったわけではない。又吉盛清沖縄大学客員教授の場合、これまでに出版した「日本植民地下の台湾と沖縄」(沖縄あき書房、1990年)と「台湾 近い昔の旅 植民地時代をガイドする 台北編」(凱風社、1996年)がいずれも1997年に台湾で出版されており、近著の「大日本帝国植民地下の琉球沖縄と台湾 これからの東アジアを平和的に生きる道」(同時代社、2018年)の翻訳出版されることが決まっている。これら3冊はいずれも、筆者である又吉氏自身が自身の人脈を生かして翻訳出版にこぎ着けた。又吉氏は、県産本ネットワークの動きを「私の次の世代の動き」と注目しており、沖縄の出版社がエージェントを通して海外の出版社とつながる手法に関心を示している。
これは沖縄において出版ビジネスを強化するという点でも、求められる形といえるだろう。池宮社長は「台湾の沖縄への興味は幅広く、ガイド本やビジュアル本、歴史、平和、文化、エッセーとさまざまなジャンルに可能性があるということだ」(2018年2月23日付「琉球新報」への寄稿)としており、翻訳出版の広がりに期待を寄せる。
又吉氏の言葉を借りれば、翻訳されて海外に出ていく県産本は「沖縄自身の『自己紹介』」と同じようなものだ。沖縄の個性を等身大の形で世界に伝えるうえで、翻訳というツールをどう使いこなしていくか。県産本の出版人たちがまずは第一歩を踏み出した。