「想定外」だった辺野古軟弱地盤

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設計変更は必須か

 

大掛かりな地盤改良が必要となる場合、避けて通れないのは設計変更だ。設計変更は、公有水面埋立法で知事の承認事項と規定されており、知事の判断次第で工事の進捗に大きな影響を与えるのは必至となる。

埋め立て予定海域には活断層が存在する可能性も指摘されてきたが、政府は1711月、「既存の文献によれば、辺野古沿岸域に活断層が存在するとは認識していない」との答弁書を閣議決定した。しかし、今回公開された報告書には、埋め立て予定地近くのキャンプ・シュワブ先端部に連なる陸域に破線を表示し、「破線は活断層と断定されてはいないが、その疑いのある線構造と分類されている」と言及している。また、専門家の間で活断層の可能性がある、とされている辺野古断層と楚久断層の延長線が交差する海域の地点は黒塗りされていた。

沖縄防衛局はどう認識しているのか。

設計変更の可能性については「当該ボーリング調査におけるN値の結果だけではなく、室内試験を含む現在実施中のボーリング調査の結果を踏まえ、総合的に地盤の強度および性状を判断することとしております。したがって現時点において沖縄県に埋め立て承認の変更申請を行う考えはありません」と回答。

活断層に関しては「既存の文献によれば辺野古沿岸域、キャンプ・シュワブ水域内、辺野古沿岸域における活断層の存在を示す記載はないことから、辺野古沿岸域に活断層が存在するとは認識しておりません」と従来の見解を繰り返した。

国は当面、設計変更の手続きを取らずに埋め立て工事を進める方針だ。しかし、この方針はあくまで「現時点」での判断である点に留意する必要がある。知事選は今秋に迫っており、辺野古新基地建設に反対する翁長雄志・現知事に代わる、容認派知事が誕生することに望みをつなぎ、設計変更が必要かどうかの判断を示すのは知事選後でいい、との思惑が国にあってもおかしくはないからだ。

辺野古新基地建設を事業全体の工程で捉えた場合、最大の焦点は知事選後の設計変更申請時に誰が知事に就いているか、ということになるかもしれない。辺野古新基地に対する政治手法をめぐって、「オール沖縄」内部の亀裂が深まることで「漁夫の利」を得るのは政府であるのは誰の目にも明らかだろう。

【本稿はAERA 2018年4月9日号を加筆修正しました。https://dot.asahi.com/aera/2018040300042.htmlで辺野古新基地予定地の軟弱地盤を<図>で紹介】

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