小学校上空の米軍機飛行はなぜ止められないのか

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「思い込み」で切り捨て

 

ただ、米軍内部からは沖縄に対する歪んだ見解も浮上している。

「宜野湾市民の民意を全く無視し、愚弄するもので許しがたい」

68日、宜野湾市議会は米海兵隊トップのネラー司令官が5月に行った発言に、全会一致で抗議決議し、発言の撤回を求めた。ネラー氏は記者会見で「普天間飛行場の建設時の写真を見ると、数キロ内に人は住んでいなかったが、現在はフェンスまで都市地域が迫っている」との認識を示していた。

「基地のそばに学校などを造ったのはあんたたち」「基地のおかげで経済発展しているじゃないか」といったネラー氏の認識に通じる情報は近年、ネットを中心に流布している。だが、米軍が沖縄戦で住民を追い払い、その土地に基地を建設したのは史実だ。

「この辺り一帯が戦前の宜野湾集落です」

普天間飛行場南東側のフェンスから内部を指し、かつての集落の様子を解説してくれたのは宜野湾市宜野湾に住む宮城政一さん(74)だ。基地内にある茂みには、字宜野湾郷友会が年中行事で拝む集落の水源「ウフガー」(泉)がある。同飛行場のエリアには戦前、約8800人が住んでいた。

前出の井上氏はネラー発言について、日本本土の多くの人たちの「思い込み」と同根では、と指摘する。

「沖縄の歴史や実情を知らない本土の人が多い。辺野古移設に反対する人も、地位協定改定を唱える人も、『日米安保反対派』と一括りに捉え、政治的に偏っている人と決めつけ、意見を聞いても意味がない、と切り捨てる傾向が強まっています。これでは、実りある安全保障の議論はできません」

日米関係は不変ではない。普天間第二小上空の飛行ルートをめぐって生じた日米の信頼関係の綻びは、沖縄だけにあまりにも長く、過重な基地提供の負担を背負わせることで成立させてきた「同盟のもろさ」を暗示していないか。

【本稿は『週刊アエラ』625日号掲載記事を加筆修正しました】

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