辺野古移設は首長選挙の争点にあらず
翁長知事は2014年の知事選で「辺野古新基地建設阻止」を掲げ、圧倒的な勝利を収めた。それ以来、オール沖縄候補は国政選挙や首長選挙で「辺野古新基地建設阻止」を掲げてきたが、普天間移設問題の当事者である宜野湾市と名護市の市長選で敗北するなど、市町村選挙では那覇市を除いてほぼ成果を挙げられなかった。政府に支持された候補者たちは、辺野古移設問題には触れず政府とのパイプや補助金を活用した地域振興を訴えて勝利した。
オール沖縄候補が国政選挙ではほぼ勝ち続け、市町村選挙ではほぼ負け続けてきたことは何を意味するのか。これは、国政選挙は国に求めること、市町村選挙は自治体に求めることで決まるということだろう。
2017年4月に実施されたNHK「復帰45年の沖縄」調査によれば、沖縄県民の48%が沖縄米軍基地は不要・危険だと答えている(全国では20%)。沖縄米軍基地を全面撤去もしくは本土並みに少なくすべきだと回答した県民は77%(全国56%)、辺野古移設に賛成する県民が27%に対して反対は63%(全国では賛成47%、反対37%)と、県民の大多数が現政府の基地政策に不満を持っている。国に対する意思表示の機会である国政選挙では、こうした世論が反映されてきたといえよう。
これに対して市町村選挙では、自治体の本分である市民生活への取り組みが問われる。翁長知事当選に先立つ2014年2月の名護市長選で稲嶺市長が再選したのも、辺野古移設反対の姿勢よりも、むしろ行政手腕が評価されたからだといわれている。稲嶺市長は辺野古移設反対を掲げた2010年の初当選以来、政府から名護市への再編交付金を止められるも、総務省や厚生労働省の補助金を活用して教育・福祉環境を改善し、予算の合理化・効率化によって交付金事業「わんさか大浦パーク」の経営を軌道に乗せた。
逆に2018年の名護市長選では、増大する来県観光客を名護に呼び込めていないことや、名護市営球場の改修予算獲得に苦心する中、1979年から名護で春季キャンプを行ってきた日本ハムがキャンプ地を変更したことなどが、三期目を目指す稲嶺市長に不利に働いた。【以下、「下」に続く】