普天間・辺野古問題の「焦点」はどこにあるのか(下)

この記事の執筆者

 

「安倍後」に向けたビジョンの重要性

 

振り返って見れば、仲井真、翁長という二人の知事は、安倍政権との協調と対立という点で、逆方向を向いていたかに見えるかもしれないが、「普天間の危険性の早期除去」という点では共通しており、「辺野古移設」がその回答にはならないという点でも同じであった。その中で仲井真氏は「普天間移設」とは別に「5年以内の運用停止」を求めたのであり、翁長氏は政権側の強硬策を前に、辺野古新基地反対に力点をおかざるを得なかった。

辺野古での工事は、政府と県の対立といった政治的要素は別にしても、軟弱地盤の大規模な改良と工費の膨張、財政の制約などの難関に突き当たるであろう。「早期」はとても無理である。普天間の危険性の「早期除去」という本来の目的を達成するにはどのような方途が適しているのか、今から練っておく必要があるだろう。

「安倍一強」と言われて久しいが、いずれにせよ政権末期に向けて「一強」もこれから下り坂である。普天間・辺野古をめぐる現在の強硬策には、自民党内でも眉をひそめる向きは少なくない。一方で立憲民主、国民民主など旧民主党系の野党は、鳩山政権の迷走以降、この問題には及び腰である。全国世論でも辺野古での「現行案」見直しとなれば、また「最低でも県外」かと、現状に胸を痛めつつも正直、ウンザリといった反応もあるだろう。「最低でも県外」という、あまりに分かりやすいキャッチフレーズが残した副作用である。

だが、「県内」か「県外」か、というところに問題の本質があるのではない。「普天間の危険性の早期除去」について、辺野古での「現行案」がその答えにならないことがはっきりしつつある中、いかなる方途が「早期除去」を可能にするのか。それを問い、具体化することが必要なのである。
専門家の間では、大規模な新基地建設なしに「早期」を可能にするためのさまざまな方策が議論されている。それを吸い上げ、選択肢として可視化、具体化して見せるのが政治に求められる仕事である。

「安倍一強」の陰で日本政治が活力を失っていると言われて久しい。日本のこれからにとって、実にゆゆしきことである。普天間・辺野古をめぐる「安倍後」のビジョンを構想し、具体化することは、政界における停滞打破の突破口になるだろう。

この記事の執筆者