繰り返される歴史~名護市長選と米軍再編交付金~

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2018年名護市長選の争点

 

201824日に投開票された沖縄県名護市長選は、三選をめざした現職の稲嶺進氏を、自民・公明党などが支援した名護市議の渡具知武豊氏がやぶる結果となった。有権者数48781人の名護市の市長選得票数は、稲嶺氏が16,931票に対して、渡具知氏が20,389票と、約3400票差の大勝だった。投票率は76.92%で、過去に稲嶺氏が勝利した2010年の76.96%、2014年の76.71%とほぼ変わらない。

今回の名護市長選で、一貫して普天間飛行場の辺野古移設阻止を訴えてきた稲嶺氏が敗れた理由を、相手陣営の「争点隠し」や「稲嶺氏にまつわるデマが若い世代に浸透」したことに求める報道・論評も目立つ。しかし、こうした問題は選挙戦術のテクニックの話である。

本質的な問題は、今回の選挙が、米軍再編交付金を受け取る最後の機会をめぐって戦われたことにあるのではないか。渡具知氏は、稲嶺市政が誕生した2010年以来、国が交付を停止してきた米軍再編交付金の受け取りを公約に掲げたが、その重みを十分理解していた報道は少なかったように映る。

 

ラストチャンス

 

米軍再編交付金とは、2006年に日米両政府が合意した米軍再編計画にもとづき、基地負担が増える全国の自治体に対して配分される交付金である。あらかじめ交付額が算定され、再編計画の進捗に応じて、都道府県ではなく基地所在市町村に直接交付される。環境影響評価に至ったら交付額の25%、着工が始まれば66.7%の交付というように、基地受け入れへの貢献度合が交付額に反映される仕組みだ。

沖縄県内では、普天間飛行場移設先の名護市と宜野座村、キャンプ・ハンセンのある金武町と恩納村、宜野座村、そして那覇軍港の移設先である浦添市が対象となっている。

根拠となる米軍再編特別措置法は、20173月までの10年の時限立法だったが、辺野古移設をはじめ米軍再編の実施が遅れているため、期限にともない成立した改正特措法でさらに10年延長された。

しかし、安倍晋三内閣は20174月末、辺野古沿岸部の埋め立て区域に外枠をつくる護岸建設工事に着手し、5年程度での完成を目指すとしている。2022年といえば、次の名護市長選が実施される年だ。そのときに辺野古移設に賛成する市政が誕生しても、米軍再編交付金は再編完了後、つまり辺野古に普天間代替施設が完成した後は交付されない。

2018年の名護市長選は、名護市が辺野古移設に協力する見返りに、米軍再編交付金を受け取れるラストチャンスだったのだ。

なぜ、名護市民は今回の選挙で、米軍再編交付金を受け取るという選択をしたのか。それには、名護市を含めた沖縄の基地所在自治体が、90年代以降おかれてきた経済状況を理解しないといけない。

 

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