名護市長選挙、それぞれの言葉【下】

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自民党 小泉進次郎議員「フェイクニュース」

 

小泉進次郎議員の演説が始まる前から、制服を着た高校生が大勢集まっていた。場所は名護高校前の交差点。集まっていたのはもちろん名護高校の学生たちだ。演説開始予定は15時半、実際に始まったのは16時と、明らかに学校を終えた高校生に聞かせるための時間設定だった。

今回の名護市長選では初めて18歳から投票が認められる。名護市の18歳と19歳の数を合わせると1775人。公明党2000票のうえに、新たに加わるこの若者層を取り込めば勝利が見えてくる。これが自民党の選挙戦略であるのは明らかだった。

その切り札が、若者にも人気のある小泉進次郎議員。その意図も見え見えだったと言ってもいい。それでも実物の小泉議員を目にした高校生たちは、小雨のなか目を輝かせ、声を上げた。

「この街頭演説の一番近いところを囲んでいるのは、地元の名護高校のみなさん」

小泉議員はそう切り出して、街宣車の上から高校生たちを見据えた。

「もちろん全部の有権者の中で18歳のみんなの割合は2%いるかいないかくらいだけれども、全国の政治を見たら、また世界の動きを見たら、みんなの行動が歴史や地図を変え得るということが、きっとみんなには分かっていると思う。イギリスのEUからの離脱も48%対52%ですよ。2%違ったら結果が変わっちゃう。アメリカのトランプ大統領も激戦の中でああいう選挙がありました。そしてなにより沖縄ではこの前、南城市の市長選挙で65票差というとてつもない激戦があった。それを考えれば、みんなの1票1票が名護市の結果を左右します」

このあと小泉議員は、フェイクニュースという言葉を出して、今回の名護市長選挙が知事と総理の代理戦争だとメディアが報じていることへの疑問を語り、街づくりのための政策論争の選挙だと訴えた。20分ほどの演説の中で、辺野古という言葉は一度も出てこなかった。

ところが街宣車を降りて高校生と握手をしている小泉議員に、ひとりの中年の男性が声を張り上げた。

「辺野古基地はどうするんですか、将来は?」

小泉議員が言葉を返す。「将来?」

「将来の辺野古の基地はどうなります?」

「みなさんに理解あるように進めていかなきゃね」

表情を変えずに小泉議員はそう返したが、男性は納得せず、問い詰めるように続けた。

「将来の辺野古の基地はどうするんですか。沖縄の辺野古基地は、小泉さん」

それには答えず、小泉議員はもみくちゃになりながら握手を続け、車に乗り込んだ。

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