「オール沖縄」と世代の断絶~沖縄県知事選へ向けて~

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「オール沖縄が分かりません」

 

ここで、普天間飛行場と隣り合わせの場所にあり、2004年には米軍ヘリが墜落・炎上した沖縄国際大学の学生約100人を対象に、201710月の衆議院選挙直後に実施したアンケート調査の結果を紹介したい。基地問題とは関係ない、全学部・全学年対象の講義で行ったものである。

このときの衆院選では、直前に、東村高江の民有地で普天間飛行場所属の米軍ヘリが墜落・炎上した。翁長知事率いる「オール沖縄」の候補者が、県内4小選挙区のうち3つを制したのも、ヘリ墜落事件の影響が大きいと指摘された。

だが、実施した調査(回答率9割)では、回答者の72%が衆院選で投票したと答え、沖縄県の投票率約56%を上回った一方で、「オール沖縄」候補に投票した者は約半数だった。衝撃的だったのは、「オール沖縄が分かりません」と余白に書き込んだ者が2名いたことだ。

沖縄県内の大学進学率は4割弱にすぎない。大学に進学しても、沖縄国際大学に限っていえば、県外での就職も想定した就職活動を行っているのに、卒業と同時に正社員として就職できる学生は半数程度である。こうした状況で、「オール沖縄は基地問題ばかりで、経済政策がない」という学生の声も聞く。

確かに、近年の沖縄経済は観光業によって伸長しており、「オール沖縄」は、返還された米軍基地の跡地を観光に利用すれば、沖縄はより豊かになる、と主張している。しかし、若者にとっての問題は、沖縄の観光業が非正規雇用とブラック企業の温床となっていることだ(201713日付琉球新報社説など参照)。どの学生も、県庁や市役所の観光課ならともかく、観光業では働きたくないと言う。

「オール沖縄」がこれから知事選を迎える上で、大事なことは、沖縄が日本の民主主義の希望になることではなく、沖縄の民主主義を守るために、県内の若者に希望を持たせる経済政策を打ち出せるかどうかだろう。

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