普天間移設22年の定点観測【その3】

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安倍内閣と「オール沖縄」の対決

 

20147月、安倍内閣は、辺野古埋め立て工事を開始するため事業に着手した。

同年11月の沖縄県知事選では、かつて自民党県連幹事長も務めた那覇市長の翁長雄志が「普天間の県内移設反対」を訴え、政財界の保革統一戦線(「オール沖縄」)に支えられて現職を下した。

安倍内閣は知事選から5日後、衆議院解散に踏み切った。だが、12月の衆院選では、県内の全4小選挙区で自民党の候補者が敗北し、「オール沖縄」候補が勝利した。

2015412日の地元紙は、翁長知事が翌月、県民大会に出席後、沖縄の世論をアメリカの政策決定者に伝える目的で訪米する予定を報じている。翁長知事はアメリカで、在沖海兵隊の移転先であるハワイの知事や、国防副次官補代行、国務省日本部長などと会談した。

同年10月、安倍内閣は、辺野古埋め立ての本体工事に着手する。翁長知事は、仲井眞前知事による辺野古埋め立ての承認を取り消した。すると、安倍内閣は、国土交通相による撤回勧告と指示をへて、代執行訴訟をおこす。20161月末に出された福岡高裁の和解勧告に対し、安倍内閣は消極的に応じたが、3月から一時的に工事を中断した。

和解勧告の直前に実施された宜野湾市長選では、佐喜真市長が「オール沖縄」候補に6000票弱の差をつけて大勝した。佐喜真市長は選挙で、普天間の早期返還を訴える一方、移設先についての言及を避けた。

2016412日の地元紙は、20年たっても普天間返還合意が実現しない理由は、日米両政府が沖縄の世論を無視し、代替施設の県内移転にこだわってきたからだと批判した。同年7月の参議院選挙でも、沖縄選挙区の島尻安伊子沖縄北方相が敗北。自民党は沖縄で衆参ともに選挙区選出の議員がいなくなり、20年ぶりに「自民空白県」になった。

しかし、安倍内閣は参院選から12日後、あらためて、沖縄県の埋め立て承認取り消しの違法確認訴訟をおこす。福岡高裁は9月に国の主張を全面的に認め、最高裁が12月に高裁判決を確定させた。最高裁判決から1週間後、辺野古埋め立て工事は再開される。

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