深刻な市町村の県民投票ボイコット
県民投票の輝きもまた、ほどなく失せ始める。
実際の投開票作業や有権者の名簿作成を行うのは市町村だが、41市町村のうち、石垣市議会が10月17日、宜野湾市議会も12月4日に県民投票条例に反対する意見書を可決。うるま市議会も12月7日、県民投票予算案を否決したのである。さらには12月10日、宮古島市議会が県民投票事務予算を認めなかった。糸満市議会でも、12月21日に予算案が否決される恐れがある。これらの市の有権者は、住民投票の権利を奪われる可能性が高い。
普天間移設問題の当事者である宜野湾市で、県民投票が実施されないとなれば、その正統性が弱まることはまぬがれないだろう。仮に5市で県民投票が行われないとすれば、全体の投票率に与える影響も小さくない。
地元の政治家たちは、保革を問わず、辺野古埋め立てに賛成または反対の「民意が示された」といえるためには、知事選でデニー氏が獲得した約39万票(有権者の約36%)を上回る票数が必要と見ている。
2018年9月現在、石垣市の有権者数は3万8740人、宜野湾市が7万6616人、うるま市が9万7212人、宮古島市が4万3878人、糸満市が4万7763人となっている。合わせて30万4209人。沖縄県の有権者総数115万8602人の約26%に当たる。有権者の4人に1人が投票の機会を奪われた場合、賛否の一方だけで39万票以上を獲得できるだろうか。
改正された地方自治法を悪用
沖縄県は、県民投票事務は市町村に移譲されるので、知事が執行を強制することはできないとしながらも、実施は義務との見解を表明している。
1999年に地方自治法が改正されるまでは、地方自治体が国の事務を強制的に委任される機関委任事務制度のもとで、都道府県は国の機関として市町村に対する指導監督を行っていた。だが、地方自治法改正に伴い、2000年に機関委任事務が廃止されると、都道府県と市町村は制度上は対等の関係となる。
今回の県民投票で、一部の市町村が県民投票へのいわばボイコットを表明したのは、改正された地方自治法を悪用するものだ。