現在の状況はどうか
ではこのような観点からみて現在の状況をどうであろうか。普天間基地の辺野古移設問題が日本全体の問題になっているのであろうか。あるいは基地の過重負担の問題が日本全体の問題になっているのであろうか。
前回の論考で述べたように、現在は沖縄県が「基地負担の軽減などを本土側に訴えても、その反応はこれまでにないほど弱まって」おり、これが日本全体の問題であるとは捉えられていない。しかも、「与野党含めて国会の大多数は辺野古移設推進の立場」にあり、辺野古移設に反対する沖縄県とは別の方向を向いているのである。
したがって、沖縄の要求に理解を示して日本政府が対米交渉に乗り出すという状況にはなく、逆に沖縄の民意を無視して辺野古移設を推し進めているのが、現在の状況なのである。言い換えれば、これまでのように沖縄側が問題を訴えれば本土側に響き、それが日本全体の問題として認識され、しかも政府が対米交渉に乗り出すという状況とは全く異なる局面に入っているということである。つまり、「沖縄の反対が日米同盟を揺るがす」といった事態はもはや過去のものとなってきており、いまでは「沖縄で反対があっても日米同盟は揺るがない」というような事態になりつつあるといえよう。
よって、この新しい状況を知的にも実践的にもどう克服するのかが、いま沖縄側も本土側もともに問われているのではないだろうか。